*かき消えて目ナ裏に濃き春の虹
*ママレード練る厨辺の花の冷え
*うつぶして満州野(ますの)の土手のおきなぐさ(S 62/6)
*山吹きのやさしさに逢ふ無人駅
*マルメロの花羞いの切なき色
*汐干岩窪みにひらり動くもの(S 62/7)
*木漏れ日にえごの花散る葬のみち
*新茶汲む青すじ太きわが手かな
*汐干岩ことりと貝の動く音 (S 62/8)
*散りつぎて煉瓦だたみの夏椿
*旅人のごと行交いて夏の雲
*梅雨曇りうすら眠りの日照草 (S 62/10)
*語らひの途絶し静寂星月夜
*海霧深し舳先わけゆく夜光虫
*祈る児の睫(まつげ)にやさし霧時雨 (S 62/11)
*破れ木戸の蹲(かんぬき)しんと水引草
*みせばやの淡紅滲む霧時雨
*ひと日旅風の花野をよぎりゆく(S 62/12)
*江口夢幻薪燃えつき秋深し
*石一つ積みて秋思の奥の院
*萩こぼる悲運の将の小さき墓
*秋蝶の守るや小さき五輪塔 (S 63/1)