*飢えし眼の狸庭に来つゆ曇り
*王侯もかくやと揺らす大団扇
*鉢植の茄子初もぎり掌にいとし(H3/10)
*膝の上のキルト刺しつぐ夜の秋
*ほほづきの如き夕日や野分雲
*筋雲や昇る新月みえかくれ(H3/11)
*蔵屋根の古りし瓦や新松子(ちぢり)
*虫どちの野辺のおくりや鉦叩
*のぼたんの紫しまり秋めける
*山陰(カゲ)の秋海棠の垂れ美しき(H3/12)
*敷かれたる煉瓦のすみの帰り花
*黄落や榛名の小径灯ともりて
*ひとひらにひとつの思い山茶花散る
*向脚(ムカバキ)の山はやや寒む亡母遠し(H4/2)
*街路沿い南京はぜの実の白き
*冬帽子スパッツ似合う父なりし
スパッツ:保温のラシャのゲートル
*鎮静の香とも燻べし月桂樹
*甲の字の背骨ますぐに初硯
*修院の窓はなやぎぬ冬桜(H4/4)
*朝粥やきざみ壬生菜のひすい色
*閑日月須臾にさりゆく二月儘
*見て聞いて語り盡くさん申二月(H4/5)