ふと見つけた母の俳句手帳から①

*みるべきを見しあと寂し沙羅の花(S 56/9)
*戦跡を訪(と)いし日遥か棗(なつめ)の実(小学生の遠足、旅順の水師営を訪ねて)
*八十路経て相逢ふ友や菊日和(S 57/2)
*灰十字額に印され聖灰祭
*母の日の慕情アカシヤの風にのり
*はづされて風の沙汰止む夜の風鈴
*セントポーリアの花芽たしかむ冬の灯に(S 58/3)
*蝋涙を掌に過越しの徹夜ミサ(S 58/7)
*退院の肩にあふるる新樹光(S 58/8:父の退院)
*病院の窓のパンジー猿の面(おも)
*夫と居て孤独拡がる水すまし
*銀の匙磨く窓辺の青葉風
*灯篭に沙羅の落花の仄かなる
*慎重に我がみち行かむ初茜(S 59/3)
*妹 乳がんにて逝く一月七日(S 59/4)
*去年この日ともに仰ぎし寒昴
*底ひなき死の重たさや寒昴
*忘るるは死よりむごしと冬すみれ
*旗雲のにび色放つ寒夕日(S 59/5)
*さゆらぎて寂しさ漂ふ藤の花