ふと見つけた母の俳句手帳から③

*かりがねの掛け橋高く小望月(S 60/12)
*丸屋根(ドーム)のごと咲き盛り揺れ百日紅
*暮れ染めし坂のはづれの白槿花(むくげ)
*つややかな栗掌らにもてあそぶ
*秋の川雲よりゆるく流れゆく
*流木の打ち捨てられて秋の川(S 61/1)
*無人駅に降り立つ茶梅(さざんか)のほとり
*かき殻をまぜて深々葱植ゆる
*冬の夜の紅茶サモワールの影重ね (S 61/2)
*月桂樹(ローレル)の大樹きらめく初明り
*しまい湯の物洗うくせもがり笛
*鳥影のよぎる小障子汁粉餅 (S61/4)
*春駒のありて小暗き人形店
*えくぼのごと畑土に消ゆ春の雲
*春さみし音失ひしサモワール(昔コークス、今電熱となる)(S 61/5)
*祈ること忘れてばかり四旬節
*遠嶺(ねね)の影濃き甲斐路朧月
*駄々こねし子に似し春の歩みかな(S61/6)
*はるけくも来し居庸関柳絮舞ふ (S61/8)
*羅(うすぎぬ)の美し夏光りを刺しこめて(蘇州)
*涯てしなく淡紫に桐並木(北京)
*玉杯を選ぶ薄暑の王府井(ワンプーチン)
*寡黙にて滾(タギ)り来るもの青葉潮 (S61/9)