~神はわたしに語り掛けておられる?~

第一章

更なるものを求める魂

:Whatever God says, do it.更に求める魂:神の仰せは何でもおやりなさい

それが始まったのは数年前のことで、神が聖書を手放しなさいと仰った日からです。
わたしは遠方に出かけて、話すということに疲れ果てていました。ただただ飛行機の指定席に座って眠りたいと、そればかり考えていました。
自分の指定席の列には他に誰もいなかったことが、どれほど嬉しかったか想像してみてくださいな。目を閉じて、その態勢に入ろうとした瞬間に、ぎりぎりで到着した二人の搭乗者がわたしの列の座席に座ったのです。

わたしはがっかりして、昼寝をやり過ごすことにしました。どうしても眠りたかったわたしは、ふと目覚めると、隣に座った男性の肩に頭を乗せてしまっていたのです。これほど恥ずかしい思いはもうするまいと、バッグから原稿を取り出し、読み始めました。
 「何をなさっているのですか?」とその男性は聞いてきました。わたしは自分が作家であること、女性を神の御心に導くことについての本を書こうと思っていることを伝えました。彼は、微笑みながら、神とはまたなんと興味深いテーマでしょうと言いました。わたしは、そうですね、と言って、彼の信仰についていくつかの質問をしてみました。いつの間にかわたしは自分のバッグから聖書を取り出し、彼の抱えている問題を扱っている聖書の個所を説明してみせました。
彼は次々と質問をしてきたので、わたしは、どうかそれに答えられますようにと神に祈り続けました。

すると突然、神が、わたしの聖書をその男性にあげたらどうかと仰っている感じがしました。今では、この聖書はありきたりの聖書ではありませんでした。それは、毎日使う、マーカーを引いたり、アンダーラインをしたり、書き込みをしたり、涙の跡さえある聖書なのです。
子供たちの落書きまでしてあって、わたしは、頭の中で神と議論を始めました。でも、神のメッセージは明確で、わたしは自分の聖書を手放さなくてはなりませんでした。

そこに挟んであった教会の古い会報や紙切れを外し、深呼吸して、ため息をつきながら、その男性の手に聖書を渡し、「あなたにわたしの聖書をあげるわ」と言ったのです。彼は驚いて、そんな頂き物、受け取れませんよと言いながら、聖書をわたしの手に戻しました。わたしは譲らずに、こう言いました:「この宇宙の神は万物の真っただ中で、歩みを止め、誰かの心を捉えることがあります。今日、神はあなたのために歩みを止められたのよ」

その男性は、わたしの聖書を受け取り、二つの約束をしてくれました。一つは、必ず読むということ、そして、もう一つは、読み終わったら、わたしがしたように、また誰かに渡すということを。

いつの間にか飛行機は着陸していて、私たちは互いに別れを告げました。飛行機を降りようと通路に出た時、その男性の脇に座っていた女性が手を伸ばして、わたしの腕を掴みました。彼女は飛行中ずっと窓の外を眺めていて、私たちの会話など聞いていないと思っていました。
けれども、彼女の涙の跡は、そうではなかったことを物語っていました。くぐもった声で、彼女はささやきました:「ありがとう。あなたが今日なさったことを見ていて、わたしの人生が変わりました」と。

わたしは彼女の手に自分の手を重ね、ささやき返しました:「どういたしまして」。すると、何かがこみあげてきて、涙が溢れてきました。もう彼女にあげる聖書はなく、代わりに手持ちの本の一冊を彼女に渡し、お別れのハグをしました。私たちは全世界にイエスのことを告げ知らせなければならない、必要な時だけ言葉を用いて、と言われてきましたが、今そのことを強烈な真理であると実感しています。
その女性には一度もイエスのことを話した事がありませんが、彼女はわたしの従順の姿勢を通して、イエスを見たのでした。何という謙遜、何という深さでしょうか。
(続く)